どんなクラブ?
クルブ・アトレティコ・デ・マドリードは1903年創設、120年を超える歴史を持つマドリードの名門。本拠地はエスタディオ・リヤド・エア・メトロポリターノ(命名権売却済み、収容約70,460人)。
同じマドリードを本拠地とするレアル・マドリードとの一戦は「マドリード・ダービー」と呼ばれる、スペイン屈指の大一番。
基本データ・タイトル歴
クラブ最大の悲願は欧州最高峰のタイトル。1974年の欧州チャンピオンズカップ決勝、そして2014年・2016年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝はいずれも敗退(2014・2016年は2試合ともレアル・マドリードが相手だった)。「あと一つの壁」を超えられるかが、クラブ史における最大のテーマであり続けている。
アポロ・スポーツ・キャピタルの参入と大規模開発
2026年3月12日、米投資ファンドアポロ・スポーツ・キャピタルがクラブ株式の55%を取得し筆頭株主に就任(クラブ評価額は約25億ユーロ)。これによりクラブは新たな成長フェーズに入っている。
本拠地周辺では、旧センター・アクアティコ(水泳競技場)跡地をスポーツ・エンタメ・文化・教育の複合施設に転換する再開発が進行中。Live Nation・Oak View Group・クラブの合弁事業体「Barsento」が主体となり、2030年完成を目指す(当初検討されていたホテル建設案は撤回され、コンサート会場の建設に方針転換)。マドリード北東部を新たなスポーツ・文化拠点にする都市計画「シウダー・デル・デポルテ」構想の一環でもある。
監督:ディエゴ・シメオネ
1970年4月28日生まれ、アルゼンチン・ブエノスアイレス出身。選手時代はベレス・サルスフィエルド、セビージャを経て1994年にアトレティコ加入、1996年のリーグ&コパ・デル・レイ制覇に貢献した。代表では1994年W杯出場、コパ・アメリカ優勝2回、96年アトランタ五輪銀メダルを経験している。
2011年12月23日にアトレティコの監督に就任し、2026-27シーズンで指揮官として15年目のシーズンを迎える異例の長期政権。就任以来、リーガ優勝2回(2014, 2021)、コパ・デル・レイ1回(2013)、CL決勝進出2回を果たしてきた。
チームのプレースタイル
① 基本は4-4-2、堅守速攻
球際の激しさとハードワークを前面に押し出す、伝統的な堅守速攻スタイルが基本線。近年は4-3-3や5バックへの可変も併用する柔軟性も持ち合わせている。
② 「シメオネイズム(Cholismo)」
インテンシティ・団結・ハードワークを重視するクラブの精神文化。「一試合ずつ(partido a partido)」の姿勢を貫き、個の能力差を組織力と闘争心で埋めるのがアトレティコ流。
③ コケという象徴
下部組織出身でクラブ史上最多出場記録(681試合超)を誇るコケが、2026-27シーズンも主将としてチームを牽引する。契約は年次更新方式で在籍を継続している。
今夏の大型補強とグリーズマン退団
今夏はクリスティアン・ロメロ(トッテナムより)、アレハンドロ・グリマルド(レヴァークーゼンより)、モルテン・ヒュルマン(スポルティングCPより)、イ・ガンイン(PSGより)と補強が続いた。特にイ・ガンインにはアントワーヌ・グリーズマンが12年間の在籍を経て退団(2026年5月、契約満了でオーランド・シティFCへ)した後の背番号7が託されている。
ただし残留後もアルバレスを巡る状況は落ち着いておらず、ホームゲームではファンからブーイングを浴びる場面も出ている。移籍先としてはクラブが強く拒否するバルセロナではなく、アーセナルが有力との見方も現地で出ており、契約が残ったまま完全に気持ちが離れてしまっている選手をどう扱うかは、シメオネにとっても難しい課題になっている。グリーズマンが一度退団しながら復帰を果たした前例もあるクラブだけに、今回もそうした形で決着してほしいという声も聞かれる。
バルセロナ移籍が実現しなかった背景には、金額以上の事情がある。アトレティコはここ数年、攻撃の組み立てをアルバレス中心に設計してきたクラブであり、行き先がどこであれ放出自体が最初から現実的な選択肢ではなかったというのが実情に近い。加えて、契約が残ったまま移籍志向を公にし、トレーニングへの取り組み方にも変化が見られたと伝えられる本人サイドの対応も、クラブ側がバルセロナとの交渉に前向きになれなかった一因とされる。バルセロナが提示した金額自体も、総額約1億ユーロを6年という異例の長期分割払いで示すなど、クラブとして到底納得できる内容ではなかったとの見方が強い。レアル・マドリードも約1億5000万ユーロでの獲得に動いたと報じられたが、こちらは会長選での「世界的なビッグネームを獲得する」という公約を意識した、いわば儀礼的な打診という色合いが強かったとされる。
こうした経緯を踏まえ、現地では「アルバレスがファンの信頼を取り戻す道は、かつてグリーズマンが辿った軌跡と同じではないか」という見方も出ている。誠実に頭を下げる姿勢を見せることが、サポーターの心証を変える事実上唯一の手段とされ、アトレティコのファンは本音で謝った選手を許してきた歴史を持つクラブでもある。
基本フォーメーション:4-4-2(バリオス中心の中盤)
シメオネ監督のベースは伝統の4-4-2。フリアン・アルバレスとイ・ガンインの2トップに、バリオスを中心とした運動量豊富な中盤を組み合わせる。控え層も含めた想定布陣は以下の通り。
※開幕から数試合の起用実績と現地報道をもとにした予想布陣であり、対戦相手やコンディションにより変動します。
カンテラの充実と若手の台頭
補強だけでなく、アトレティコの下部組織(カンテラ)の質の高さも今季注目されている。若干16歳の右サイドバック、ドミンゲスは早くもトップチームでレギュラー争いに加わる存在として評価されており、9月の代表ウィークでのA代表招集が期待される選手にパブロ・バリオスの名前も挙がっている。バリオスは怪我からの完全復活を印象づけるプレシーズンを過ごした。
戦術的にもバリオスの立ち位置は変わりつつある。かつてアルバレスが担っていたチームの軸としての役割を、今は事実上バリオスが引き受けているとの見方があり、リーガらしいパス精度とプレッシャー耐性、そしてプレミアリーグ的なボックス・トゥ・ボックスの運動量を併せ持つ稀有なタイプとして評価されている。今シーズンのリーガの中盤の中でも屈指の出来という声も上がるほどで、彼の運動量のおかげでコケがカバーする守備エリアを絞り、体力を温存できているという副次的な効果も指摘されている。昨シーズンは怪我で長期離脱しW杯のスペイン代表メンバーからも漏れたが、この状態を維持できればフル代表招集も十分視野に入る位置にいる。
フリアン・アルバレス中心の前線構成に加え、中盤ではユルマンドの適応も順調と見られており、大幅な入れ替えではないものの、着実にバージョンアップしたチームに仕上がりつつある。
アルバレス不在時の前線と新戦力の武器
フリアン・アルバレスを起用しづらい試合では、前線はスルロットと今夏加入のジョナサン・デイビッドが軸になる見通し。両者ともフィジカルと空中戦の強さを持ちながら、裏への抜け出しやプレッシングもこなせる機動力を兼ね備えたタイプで、単なる大型ターゲットマンにとどまらない点が期待されている。
新加入のヒオバニ・ロセルソに関しては、左足から繰り出すミドルシュートの精度とレンジが、昨シーズンのチームに欠けていた武器として注目されている。右サイドから中に切れ込んでシュートを狙う形など、遠目からゴールを脅かせる選手の存在は攻撃の幅を広げる。現地では、この一撃の選択肢を持つかどうかが、同じ左利きのテクニシャンである久保建英との比較でしばしば語られており、久保はプレー自体の質は高いものの遠目からのシュートを積極的に選ぶ場面は少ないという指摘があり、この違いがキャリアの現段階でロセルソがより大きなクラブに移籍できた理由の一つという見方も出ている。
選手名鑑の見方
Transfermarkt(2026-27シーズン、公式サイトで裏取り済み)をもとに作成。今夏はナウエル・モリーナ(ASローマへ)、グリーズマン(契約満了)ら退団があった一方、クリスティアン・ロメロ、グリマルド、ヒュルマン、イ・ガンインらが新加入している。
