CLUB DEEP DIVE ・ TEMPORADA 2026/27

バレンシアCF
完全ガイド

バレンシアを知らない人でもわかるように。クラブの歴史・監督・チームスタイルから、選手一人ひとりのプレースタイル、そして佐藤龍之介の起用展望まで。vcfjapan.org・valenciacf.com・現地番組の情報を中心にまとめました。

Valencia CF
Valencia Club de Fútbol
バレンシア州バレンシア市 ・ 創設1919年

どんなクラブ?

バレンシアCFは、1919年3月18日にスペイン東部の都市バレンシアで創設された名門クラブ。愛称は「ロス・チェ(Los Che)」。レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリードと並ぶ「ビッグ4」の一角として、リーグ優勝6回を誇る伝統校。

クラブ紋章にはコウモリ(murciélago)があしらわれている。これはバレンシア王国の紋章に由来するとされ、地元では縁起の良いシンボルとして親しまれている。

2004年にはUEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)とUEFAカップウィナーズカップを制覇するなど、2000年代前半は欧州でも屈指の強豪だったが、近年はオーナーのピーター・リム体制下で低迷が続き、今シーズンで8年連続の欧州カップ戦圏外という厳しい状況が続いている。

基本データ

創設
1919年3月18日
本拠地
エスタディオ・メスタージャ
収容人数
約49,430人
愛称
ロス・チェ
オーナー
ピーター・リム
主要タイトル
リーグ優勝6回/UEFAカップ2回

メスタージャ、最後のシーズン

今シーズンは、長年親しまれてきた現メスタージャでのラストシーズンという特別な意味を持つ。老朽化が進んでいたスタジアム移転計画は工事の遅れで長らく停滞していたが、バレンシア市・州とクラブの協力でようやく工事が再開。新スタジアム「ノウ・メスタージャ」は2027年夏に完成予定で、2027-28シーズンから移転する見込み。

移転後は現メスタージャが取り壊され、跡地には高級マンションを中心とした都市開発が計画されている。今シーズンの一戦一戦が、このメスタージャで見られる貴重な試合ということになる。その象徴として、今シーズンの年間シート更新率は99.5%という驚異的な数字を記録しており、ファンの間でも「ラストシーズンを全力で応援しよう」という機運が高まっている。

監督:カルロス・コルベラン

1983年4月7日生まれ、スペイン出身。バレンシアの下部組織出身で、ハダースフィールド・タウンやウェストブロムなどイングランドのクラブで指揮経験を積んだのち、2024年12月にバレンシアの監督に就任。今シーズンで3シーズン目を迎える。英語が堪能で流暢なコミュニケーションを取れることでも知られる。

前任のルベン・バラハが解任される厳しい状況の中でチームを引き継ぎ、堅実な組織作りでチームを立て直してきた指揮官。ただし、クラブの財政事情から大型補強は難しく、今夏も目立った戦力強化がないまま新シーズンに突入している(8月時点で目立った新加入はアリウ・ジェン、ジャスティン・デ・ハース、佐藤龍之介の3人程度)。

地元では以前からコルベラン監督への評価が厳しく、それでもクラブが契約延長に踏み切った経緯があるため、結果が出なければすぐにブーイングが起きかねない空気だという指摘も現地解説者からある。佐藤個人のプレー自体は好評価な一方、「佐藤が良いというより、チームやサッカーの質そのものが厳しい」という辛口の見立てもあり、開幕から引き分けが多くなりそうな苦しい戦いが続くとの見方が出ている。

「補強がなかなか進まない中、まずは残留を確実に、そのうえでカンファレンスリーグ出場権を狙いたい」というのが今シーズンの現実的な目標として語られている(現地レポートより)。

チームのプレースタイル

① 組織的な守備からのカウンター
潤沢な戦力を持たない中、規律あるブロック守備を土台に、奪ってからの素早い攻撃で得点を狙うのが基本方針。

② プレシーズンを通じて定着した4-2-3-1
プレシーズン期間中、コルベラン監督が一貫して採用してきたのは4-2-3-1。ボランチにギド・ロドリゲスとウグリニッチを組ませ、トップ下にハビ・ゲラ、そして佐藤龍之介を左サイドハーフに置く形が定着しつつある。ただし主力右SHのルイス・リオハが負傷離脱中(全治目安1ヶ月)で、開幕節にあたるセルタ戦では3バックへの可変など布陣面の工夫も検討されている。

③ 若手・移籍組の融合
ペペル、ハビ・ゲラら下部組織出身の選手と、今夏加入のギド・ロドリゲス(アルゼンチン代表経験あり)、佐藤龍之介ら新戦力を組み合わせてチームを構成。

④ ホーム、メスタージャの後押し
ラストシーズンとなる今季はホームの動員も好調が見込まれ、メスタージャの熱気を追い風に勝ち点を積み上げたい狙いがある。

特集:佐藤龍之介、プレシーズンでの躍動

プロフィール
2006年10月16日、東京都西東京市生まれ。FC東京U-18時代の2023年3月、16歳4ヶ月20日でルヴァン杯にてクラブ最年少デビュー記録を樹立。同年8月にプロ契約を結びトップ昇格。2025年6月、W杯アジア最終予選(対インドネシア戦)で日本代表デビューを果たし、J リーグ発足後では最終予選最年少出場記録(18歳237日)を樹立している。

移籍の詳細
2026年7月7日にバレンシア移籍が発表され、契約期間は2031年夏まで(5年契約)。移籍金は現地報道によると約400万ユーロ(5回分割払い)とされ、FC東京は将来の転売時に利益を得られる15%の売却関与条項(レベンタ条項)を保持している。

プレシーズンでの評価
2試合目のエルデンセ戦で見事なボレーシュートを決めるなど強烈なインパクトを残し、地元紙が「佐藤マニア」と呼ぶほどのフィーバーを巻き起こした。エルデンセ戦以降プレシーズン4試合連続でスタメン起用され、左サイドハーフとしてほぼポジションを掴んだと見られている。

プレースタイル・戦術的な役割
左サイドから内側に絞り込むプレーが持ち味で、その動きに連動して左サイドバックがオーバーラップする形(後方3枚気味・左肩上がりのビルドアップ)をチームにもたらしている。トップ下のハビ・ゲラとは事実上の「ダブルシャドー」を形成。最大の武器は、ボールが来ない時間も含めて絶えず動き続ける豊富な運動量とプレーの継続性、そして相手を背負った状態からの反転・持ち運び・ラストパス/ミドルシュートといったアタッキングサードでの仕事。現状の課題はチームメイトとのタイミングの擦り合わせ。固定ポジションに縛られず状況に応じて立ち位置を変えられる戦術理解度の高さから、ビジャレアルのアレックス・バエナのような可変型アタッカーになぞらえる声も現地で出ている。

人物面
空港到着時からの明るい振る舞いや、新加入恒例のチーム内一発芸(カラオケスタイル)をこなすなど、コミュニケーション能力の高さでもチームメイトやファンの心をすぐに掴んだと現地で評判。通訳をつけていない点も含め、積極的に英語でコミュニケーションを取る姿勢が際立っている。

今後の懸念点
2027年1月のアジアカップに招集される可能性が高く、その場合は約1ヶ月にわたってチームを離れることになる。リーグ戦・コパデルレイが佳境に入る時期と重なるため、チームとしては悩ましいタイミングでもある。

「エルデンセ戦からもう中心に置いてもらっている。これだけ運動量と継続性のある選手はラリーガ全体で見てもなかなかいない」——現地バレンシア在住ジャーナリスト・小澤一郎氏の分析より

現地で見てきた解説者の驚き
バレンシアに在住しプレシーズンから間近で観察してきた現地解説者は、19歳の無名に近い選手にクラブがこれだけの移籍金を投じることに当初は懐疑的だったと明かす。ただし実際のプレーを見てからは評価を改め、「ルーキーにしては上出来」という次元を超え、ラリーガの基準で見ても純粋に目を引くレベルだとしている。

「彼を活かすための布陣」という発想の転換
プレシーズンの故障者続出で、当初想定していた4-2-3-1を組めず、緊急避難的に5-4-1や3-4-2-1に近い可変システムを採用せざるを得なくなったバレンシアだが、佐藤の運動量とプレッシングの質によって、このシステムは実質5-3-2に近い流動的な形として機能し始めているという。現地の見立てでは、もはやチームが佐藤に合わせてシステムを組んでいるというのが実態に近い。

ポジションの引き出しの多さ
岡山、FC東京時代から左ウイング・右シャドー(インサイドハーフ寄り)・トップ下と複数のポジションをこなしてきた佐藤は、バレンシアでもすでに柔軟な立ち位置を見せている。この適応力の高さは、佐藤個人の資質にとどまらず、日本の育成年代における戦術的な理解度の高さそのものを映す一例だと現地では受け止められている。

フェルミン・ロペスとの比較
プレースタイルの近さで名前が挙がるのが、バルセロナのフェルミン・ロペス。豊富な運動量に加え、ボールが来ない時間帯でも良いポジションを取り続けて我慢強く待てる賢さ、そして守備の規律とフィニッシュ能力を兼ね備える点が共通しており、成長次第ではバルセロナ級の選手になり得るという期待も出ている。

ゴール前での貪欲さと今後の見通し
今季初ゴールはまだだが、ボックス内やチャンスの生まれる場面に常に顔を出す「良い意味での貪欲さ」がすでに際立っており、シーズンを通せば6~7点程度は決めてもおかしくないというのが現地の見立て。順調にいけば、バレンシア在籍わずか1年での大型移籍というシナリオも十分現実的とされている。

日本代表招集を巡る評価
直近の日本代表メンバーから漏れたことについては、現地解説者と別のコメンテーターの双方が「今振り返れば選考ミスだったのでは」との見方を示している。森保体制の3-4-2-1で不足しがちな「シャドー」タイプの人材事情を踏まえると、9〜10月の代表ウィーク以降はほぼ確実に定着していくとの予想が強く、特に左シャドーで起用されれば、ドリブル、戦術的な位置取りの巧さ、限られたボール供給の中でも落ち着いて判断できる能力が最も生きるとの指摘もある。単純なスピード・ドリブル系のウイングとして使うより適性が高いという評価だ。

基本布陣:3バック可変システム(実質5-3-2)

プレシーズンで想定していた4-2-3-1は負傷者続出により組めず、緊急避難的に採用した3バックが開幕後もそのまま定着。デ・ハース、タレガ、ジアカビの3CBを置き、ガヤとJ.バスケスがウイングバックとして高い位置を取ることで実質的な5-3-2〜5-4-1に近い形を作る。ボランチはギド・ロドリゲス+ウグリニッチの組み合わせが軸。前線は佐藤龍之介とハビ・ゲラがシャドー的に流動的なポジションを取り、ドゥロが最前線でターゲットになる形が基本。右SHのリオハは負傷離脱中で、復帰後は再びこの並びに変化が出る可能性がある。

※対戦相手や選手のコンディションによっては4-2-3-1に戻す可能性もあり、コルベラン監督は状況に応じて微調整する方針。実際のスタメンとは異なる場合があります。

選手名鑑の見方

worldfootball.netの登録選手データをもとに作成。背番号・生年月日・国籍を掲載し、プレースタイルの解説を独自に追加した。ケガで開幕を欠場中の選手には注記あり。

GK ゴールキーパー
DF ディフェンダー
MF ミッドフィールダー
FW フォワード